雑誌「チルチンびと」82号掲載 福岡県 ㈱未来工房
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199 少し内陸に入ると田んぼが広がり、日本らしい風景が残る九州北部の糸島市。けもの道のような林を抜けると、昔懐かしい民家風の建物が見えてくる。周囲の竹林が、風に揺られ音を奏でている。 「この敷地、以前は鬱蒼とした竹林だったんですよ。外構工事を自分でやっているんですが、まだ途中で」。笑いながら迎えてくれたのは、この家に住むSさん。 格子の引戸から入ると、薪ストーブとおくどさんが設置された広い玄関土間が。奥のリビングからは、囲炉裏で焼かれるシイタケのいいにおいが漂ってくる。リビングの開口から見えるのは、夫婦で耕す畑。「ごはんを食べる時に、使う分だけ目の前の畑に穫りにいく、そんなことが理想だったんです」と奥さん。 以前は長崎県の住宅街に住んでいた夫妻。ふだんは仕事で忙しいが、趣味の畑や田んぼ、DIYなどができる手づくりの暮らしがしたい、と自然豊かな糸島に土地を求めた。 家づくりを未来工房に依頼したのは、「温かい家がいいな、と思っていて。デザインにも素材感にも、ほっとするようなぬくもりを感じたんです」と、奥さん。ご主人は「未来工房さんの、どこにいても家族の気配を感じられる大らかな間取りも魅力的でした」。 希望したのは、土間、和室、薪風呂がある民家風の家。「最初はこんな暮らしをしたいって言うのに勇気が要ったんですが、すっと受け止めてくださって」。設計を担当した同社の設計士・松本典生さんは、夫妻の要望を聞き、来客が多いことなどからリビングの囲炉裏や宿泊できる和室などを提案。さらに建具や障子の細部などにさまざまなデザインを施し、空間にアクセントをつけた。「一つ言うと十、アイデアが返ってくるんです。いい提案をたくさんしてくださいました」。 夫妻が買い求めていた土地はなんと竹林。敷地内へ入るための道づくりや整地から始めなければならなかった。「大工さんはまだ若いのに、朝早くからよく働いていました。この求めたのはぬくもりのある家1:和室の欄間は波型無双。 2:土間の手洗い場は、カラフルなモザイクタイル。 3:洗面所はシックな雰囲気のタイルを。 4:真鍮のスイッチプレート。 5:手すりの支柱は、洋館風の意匠。 6:大工さんの好意で囲炉裏テーブルに彫り込まれたウサギ。 7:和室は猫間障子で、光や視線を通す。 8:2階廊下の腰壁は、木と型ガラスを組み合わせて。 9:蔓の模様の襖紙は、未来工房のコーディネーターが選んだもの。124357698暮らしにかける手間を楽しんで

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