雑誌「チルチンびと」101号掲載 福岡県 ㈱未来工房
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86な本のイメージからだ。 K邸の特徴とも言えるのが、階段室の壁にびっしりと並ぶ本棚。家じゅうの本がこの棚に収められ、階段を通るたびに自然と本に目が留まる。子どもたちは階段に座って読書をすることもあるのだとか。「本のサイズに合わせて、ミリ単位で設定しました」と、設計の石井喜之さん。読書家の奥さんならではのこだわりがここにも表れている。 Kさん夫妻が家づくりを考え始めたのは、3人目の子どもが生まれてから。どんな家にしよう、というよりは、どんな暮らしがしたいか、ということが夫妻にとっては重要だった。暮らし方に重きを置く未来工房は、家づくりのパートナーとしてぴったりだったのだ。 夕刻が近づき、近くの小学校から帰路につく子どもたちの声が聞こえてくる。K家の3人も次々と、デッキを通って土間から帰宅。二人の娘は「今日は外で食べたい」と、おやつとお茶をデッキへ運び、長男は2階でいそいそと宿題を始めた。そんな姿を、目を細めながら見守る奥さん。家族それぞれの物語が、この家で紡がれていくのだろう。読書で培われたイマジネーション暮らしのシーンを想像して 玄関ドアを開けると、淡いグリーンの腰板が目に入る。ここでも外観と同様、ヨーロッパの田舎の家といった印象を受ける。つづくリビング・ダイニングは吹き抜けのある広々とした空間。目を見張るのは北側に面した出窓で、ブルーに塗られた壁を大きくくり抜くように白枠で縁取られている。北側は田んぼなので遠くまで見通せ、外からの視線も気にならない。また、やわらかな光が入ってくるため、読書がしづらい直射日光を避けることができ、奥さんにとってもいいことずくめだ。 L字型のキッチンは使い勝手がよく、中でもこだわったのが、自然素材でできたリノリウムの床。白と黒の格子模様も、好き2311〜31階の寝室。格子窓は三連で、ここから見る庭の風景が奥さんのお気にいり。 ここにも庭の植物をしつらえている。

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