雑誌「チルチンびと」100号掲載 福岡県 ㈱未来工房
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未来に遺したい本物の素材と職人の手技 福岡県・久留米駅から車で10分ほど走ると見えてくる、真っ白な左官壁と落ち着いた色合いの板張りの外壁。気持ちよく晴れ渡った青空をバックに、爽やかなコントラストが目に飛び込んでくる。ゆったりとした敷地に建つこの建物は、未来工房のギャラリー。「公民館のような場所」というコンセプトの通り、度量が大きく、おおらかな佇まいだ。オープンから1年足らずではあるが、すでに町並みにしっくりとなじんでいるように見える。 招き入れられるようにして進むアプローチの先には、幾何学模様のデザインが施されたガラス戸。ガラリと引くと、開放的な大空間が広がる。ぬくもりある木張りの床と天井、壁はつるっとなめらかな左官壁。太鼓梁の架かる吹き抜けを見上げると、整然と組まれた現しの小屋組が。隅々までなで回すように眺めてみても、手をかけていないところなど一つもないとわかる。「素材にはとことんこだわりました」と話すのは、ギャラリー設計の中心となった片多和也さん。で84きるだけ地元・久留米市周辺や九州の材料、それも“本物”を使うことをめざしたという。主な床や天井は隣町八女市の八女杉、漆喰は田川市のもの。構造材はすべて燻煙乾燥処理をした熊本県の球磨杉、1階の床も天然乾燥の球磨杉だ。ほかにも、大川市の大川組子や佐賀市の名尾和紙の襖と障子、波佐見焼の手洗い器、地元作家の家具や照明など、見渡すかぎり九州産のものばかり。素材の力を最大限に生かすため、職人の技術もそれぞれの「豊かな日常」に思いを巡らすおおらかでフレキシブルな空間構成上/1階図書スペース。この日遊びに来ていた池田菜々絵さん親子をはじめ、多くの親子連れがここでくつろいでいくという。下/吹き抜けの太鼓梁。木と土の家特集

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