雑誌「チルチンびと」75号掲載 宮城県 ㈱タカコウハウス
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挽いた南三陸杉の美しさが引き立っている。「仕事をリタイアされたМさんが、好きなものに囲まれ、木工や庭仕事など好きなことを思い切り楽しめるように、という願いを込めて設計しました」とタカコウハウスの針はり生う和行さんは語る。 埼玉や茨城など転勤が多かったこともあり、リタイアを迎えてようやく自宅を建てる条件が整ったというМさんご一家。山歩きや川辺の散策など自然が好きで、蔵王などの山中に土地を探したこともあったそうだ。だが、「老後のことなどを考えるとあまり不便な場所も難しいかなと。でも、山暮らしにも未練があって(笑)」とご主人。奥さんの実家があったこの土地に家を建てるに当たり、いちばん望んだのは、まちなかで山暮らしを再現することだった。 そんなМさん一家が家づくりのパートナーに選んだのがタカコウハウス。「この近くでいいなと思っている建築中の家があったの。とてもおしゃれで、初めは外国の会社かと思いました。あとでわかったんですが、それがタカコウハウスの家だったん タカコウハウスが建てた南三陸杉の家を訪ねた。 宮城県の都市部を流れる広瀬川沿いの住宅地に建つМ邸。細い路地を進むと、民家の隙間から、屋根が棟で段違いになった「差しかけ屋根」の目を引く建物が見えてくる。 建て替える前の庭を生かしてつくられたという新しい庭は、ナツハゼの木を中心に広葉樹が並ぶ里山のような雰囲気。敷地に建つご主人の木工室は、どこか俗世を離れた山居のような佇まいだ。そんな庭を眺めながら、地元産・秋あき保う石の敷石をたどっていくと、2階建てと平屋部分がL字につながる主屋に着く。リビングには薪ストーブが据えられ、庭側に大きく取られた開口部からは庭が見渡せる。 目を引くのは、部屋中に並ぶアフリカ民芸品のお面や、益子焼など器の数々。「若い頃から収集癖がありまして(笑)」と笑うご主人。家を建て替えるに当たって、「こうした持ち物を飾った時に映えるように、壁は大壁で漆喰塗りにしてもらいました」と話す。その一方、天井は現しにするなど、木を見せるところと隠すところのメリハリがつけられ、そのことでよりいっそう、丸平木材でまちなかにあって、のどかな山里の暮らしを再現したM邸。積年の家族の思い出をやさしく受け止め、これからの楽しい暮らしを描くことができる家となった。右ページ/庭からダイニングをうかがう。庭木の枝ぶりが絵になる。 左ページ上/吹き抜けからリビングを見下ろす。ストーブの周囲が秋保石。 下右/LDKの白い壁にしつらえが映える。 下左/庭を囲んでL字型に建つ住まい。人を生かし、風土を生かす家づくり51デザインと大工技術に惹かれる155

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