雑誌「チルチンびと」 75号掲載 人を生かし風土を生かす家づくり 宮城編 復興の 歯車を回す 「南三陸杉」が築く絆の輪
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左/笑顔を見せる社員の佐 藤稔さん。 中央2点/新 しい機械が南三陸杉を加工 してゆく。 下2点/2台 導入した「愛工房」。40.45 ℃の低温で木材の色、艶を 引き出しながら乾燥する。 丸平木材の南三陸杉“一棟挽き”の商品 低温乾燥機「愛工房」 間柱 造作材 額縁 フローリング材 小屋筋違い 土台火打(檜) おがくず 外部胴縁 根太 野縁 チップ 野地板 内部胴縁 階段材 柱 梁土台(檜) 桁 「愛工房」は、「一般的な高温乾燥機 と違い、 40 . 45 ℃の低温でゆっくり 乾燥させることで、杉の赤身がもつ 精油成分がまんべんなく全体に広が り艶やかな木肌に。木を殺さず、次 の命につなげるという当社の考え方 に合った乾燥方法です」と小野寺さ ん。100年以上続いてきた同社の 歴史は、再び動き出した。 「新しい機械が初めて木を切った時 には思わず涙ぐんでしまいました」 と、震災直後から、小野寺さんとと もに再建に尽力していた営業部長の 石田剛さん。やむを得ず解雇になっ た仲間を呼び戻し、「もう一度みん なと仕事ができるのは、本当に嬉し いことです」と語る。「小野寺社長か ら『必ずまたやるから』って言われ て、希望をもって待っていました。 私にはこの仕事が合ってるんです」 と笑うのは、製材の質を左右する 「木取り」を担当する佐藤稔さん。父、 そして息子と三代にわたって丸平木 材で働いてきただけに、感慨もひと しおだ。工場の規模が大きくなった ことで、震災前より多い 22 人体制と なった同社。「被災地の力になりた い」と東京から就職した森川洋介さ んのような新しい力も加わり、工場 は活気で溢れている。  まちの製材所の復活を受け、南三 陸杉を育む山の仕事も弾みをつける。 地域の山林所有者有志からなる「南 三陸町山の会」の会員で、南三陸町 の森林組合長でもある佐藤久一郎さ んは、「現在、南三陸町では津波をか ぶって枯れてしまった塩害木の処理 を急ピッチで進めています」と話す。 同じく山の会に所属する、伐採会社 ㈲天神木材の菅原一之さん。作業の スピードを速めるため、「さらに重 機を増やして対応していく予定で す」と言う。塩害木の処理が終われ ば、住宅の高台移転予定地の伐採な ど、復興のための仕事が続くが、山 の会では、「丸平さんが復活して、ま たいい木を育てなきゃと気合を入れ 直しています」(同会会長・髙橋長晴 さん)と盛り上がる。各地方の林業 地を見学して、情報交換をする「山 見」を再開し、震災前の目標だった 「南三陸杉」のブランド力向上に向け、 再始動を図っている。  そして、山の活気を取り戻すため には、地域材を使って家を建てる地 域工務店の存在が不可欠だ。仙台市 に本社を構える㈱タカコウハウスで もう一度スタートラインに立ち、 いい木を育てたい この木肌の なめらかさが魅力。 150  

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