雑誌「チルチンびと」 75号掲載 人を生かし風土を生かす家づくり 宮城編
復興の 歯車を回す 「南三陸杉」が築く絆の輪
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仙台市・
南三陸町・
写真=西川公朗
3 ・
11の津波で失われた工場を、
わずか1年1カ月で再建した丸平木材㈱。
「南三陸杉」の力を理想的に引き出す新工場の稼働は、
地域の山、職人、そしてまちに希望をもたらしている。
再建に尽力した地域工務店の取り組みは、
私たちが伝えたい被災地復興のあり方だ。
深い緑の杉林に、ところどころ絵
の具を垂らしたように紅葉が混じる。
津波で流されたまちを包む宮城県南
三陸町の山あいに、威勢のいい機械
音が響きわたっている。
2台の送材車に載った丸太は、帯
鋸の放つキーンという高音とともに、
板材となって流れる。この地の岩盤
質の山と、海辺の霧によってゆっく
りと育まれた南三陸杉は、しっかり
と目が詰まり、高い強度を誇る。ま
た、淡いピンク色をした赤身の美し
さも特徴のひとつ。その木肌はなめ
らかで、輝くような材になる。「南三
陸杉の力を最大限に引き出す製材。
それが当社の哲学です。この新しい
工場は、その理想を実現する設備を
整えました」と、丸平木材㈱社長、小
野寺邦夫さんは胸を張る。
2011年3月
11
日、未曾有の地
震とそれに伴う大津波によって、工
場はまちもろとも流された。震災前
の2010年、そして震災直後の2
011年6月に取材に訪れた小誌で
も、往時の美しい南三陸の姿と、そ
の後の被災の現状を伝えてきた(小
誌
61
号、
68
号)。自身も津波から命
からがら逃げ延びた小野寺さんは、
会社再建のために奔走し、2012
年4月
11
日、震災からわずか1年1
カ月というスピードでそれを果たす。
およそ
10
億円をかけて再建された
〝新.丸平木材は、以前の倍の1万2
000立米の製材能力を持つ、県有
数の工場として復活。以前と同じく、
構造材や羽は
柄が
ら
材、床や壁に使う加工
材まで、家1棟に使う材すべてを挽
ける「一棟挽き」の設備を整えた(1
51ページ参照)。
また、新しく導入した低温乾燥機
2011年6月
2012年12月
上/まちを見下ろす小高い丘で話し合う丸平木材の小野寺邦
夫さん(左)と、タカコウハウスの髙橋順さん。 下/まちの
様子を同地点で撮影した。震災直後に比べ、がれきの撤去は
進んだが、まだ新しい建物は建っていない。
新工場の製材力は2倍、
従業員も増加
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