雑誌「チルチンびと」 61号掲載 人を生かし、風土を生かす家づくり 宮城編
3/4

だ。社長の小野寺邦夫さんは、「山の会」のメンバーでもあり、「生産者の熱意を大切にし、なおかつ時代に合った付加価値を持つ製材を提供することが重要」と語る。同社は、構造材から羽柄材、内・外装材、造作材まであらゆる製材加工を行う、「一棟挽き」のできる製材所。風合いが揃った材を使えることは、家づくりの大きな利点となる。 地域材の循環をめざして  こうした生産者と製材所に力強い援軍があらわれた。仙台市に本社を構えるタカコウハウスだ。地産の良材を探していた同社では、4年前から丸平木材との取引を始め、現在では使用するほぼすべての材を仕入れている。丸平木材の年間製材量約7000立米のうち、タカコウハウスの材は約1300立米。「うちぐらい木を使う工務店が2社、3社と増えていけば、南三陸杉のいい循環利用ができると思います」と、同社の若き社長・P橋順さんは語る。  同社では、施工した家に「山の会」のメンバーを招いたことがある。山主の方々にその時の感想を尋ねると、「心を込めて育てた木が、丸平さんで新しい命を吹き込まれ、タカコウさんでまた命を吹き込まれる。本当に感動したよ」「タカコウさんがいれば、南三陸の林業もまだ大丈夫かな(笑)」と、口々に喜びを表現してくれた。高橋社長は、「当社の大工には、『良材はこうした方々の努力で育てられたものだから、感謝して家づくりをしよう』と伝えています」と話す。生産者、製材所、そして工務店の強固な信頼関係が築かれ始めた。南三陸杉を支える人びとの環の拡がりを期待してやまない。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です