雑誌「チルチンびと」別冊15号掲載 愛媛県 ㈱西渕工務店
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5ページ 申し出を歓迎し、現在の形となるプランを提示したのである。  もとの玄関の位置にあるのが先の「リビングの大きな窓」である。玄関を移動したおかげでキッチンとリビングが家の中央近くに配置できた。「家全体が見渡せる司令塔型キッチン」と吉田氏も言うように、広々とした板敷きのリビング・ダイニングを中心に、奥の座敷は普段使わないながらも風を通し広がりを感じさせるつながり空間となった。「広くないけれども広さを感じさせる家だと思う」と奥さま。開放感があって風通しが本当にいい。3歳と6歳のいたずらざかりの子どもたちがどこで何をしていてもよくわかる。リビング・ダイニングの中央にある柱2本はもとは押入れがあった場所。構造的には外せないこれらの柱は普通なら扱いに困るところだが、遊び心を生かしてつくったベンチは、子どもたちの冒険心をくすぐる遊び場となった。  「いろんな希望を言いましたけど、そのたびに納得いく回答をもらって」とにかくとてもいい改築だった。「建築家に頼むと高くつくかと思いましたが、それだけのことはあったと感じています」  一方、仕上げ材を工務店に任せるのは吉田氏の方針である。任された西渕工務店は、床材や柱には四万十川上流の檜を使った。キッチン上部の天井には土佐和紙、壁は四国独特のやわらかな色目の生漆喰で仕上げた。地元の材料にこだわり、木の香りあふれる「呼吸する家」が西渕工務店の大事にするところである。サッシだった玄関の戸を「木製にしませんか」と提案したのも西渕社長。冬の風が強いことが心配だったが、2枚の扉の合わせ部分に工夫のある新発想の木の建具は風にも強く、玄関のイメージをがらりと変えてくれた。施主と建築家と工務店、互いの熱意と信頼関係が相乗効果を生んだ家を見た気がした。

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