雑誌「チルチンびと」別冊15号掲載 愛媛県 ㈱西渕工務店
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4ページ 空間がつながり広がった 家のなかで一番気に入っているのはどこですかと、別々に聞いたにもかかわらず、ご夫婦とも、「リビングの大きな窓」と答えた。「朝ごはんを食べているとき窓を開けると気持ちが良くて」とご主人。奥さまも「キッチンに立つと庭の緑が大きく目に飛び込んできていいですね」と言う。吉田氏に聞くと、「リビングの窓は食卓の高さが普通。それよりも下げることで光が入り、植物を飾っても、外の風景と植物が重ならないで見えるんです」とその心地よさの秘密を語ってくれた。  しかし実はここは設計のネックだった。当初夫妻は「外観を変えずに」という要望を伝えていた。改築前の、入母屋造りの屋根のついた玄関が正面やや右寄りにある特徴的な意匠を残すと、ダイニングキッチンはその右、つまり東側に置かざるを得ない。この要望を反映した最初の図面を示されて奥さまは、奥の座敷が使われなくなってしまうと感じた。意を決して玄関の移動を申し出た。「外観を変えたくない」という当初の思いを曲げてのことだ。玄関の位置を変えなければ「空間が切れてしまう」ことに気づいていた吉田氏は、この

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