雑誌「チルチンびと」別冊15号掲載 愛媛県 ㈱西渕工務店
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2ページ 静かな小路のなかほどに、落ち着いた佇まいの門構えが現れる。手入れの行き届いた小庭をはさんで、どこか懐かしさを感じさせる和風の家。  「サラリーマン家庭で育った私には、古いものが全部新しくて」と奥さまが笑う。ご主人のおばあさまの転居に伴い、おばあさまが1人で住んでいた築50年の家に移り住むことになったとき、一番入れ込んだのは嫁に来た奥さまだったかもしれない。以前から、この家のなかの風情や毎年の餅つきに心ときめかせていた奥さまは、建て替えるのではなく残したい、そして、この家に見合った直し方をしてくれる人を探したいと切に思った。  教員という仕事柄だろうか、図書館に通ってはいろいろな本を読んだそうだ。そのなかで建築家・吉田桂二氏の『からだによい家100の知恵』という本は衝撃的だった。「ページをめくるごとに、まさしくその通りと思うことばかりで」、すぐにインターネットを検索して、とにもかくにも吉田氏に相談を持ちかけてみた。するとすぐに、とてもていねいな返信メールが届き、間もなく本人が家を見に来てくれたという。「こちらへはたびたび来るんです」。そのとき初めて吉田氏が、奥さまの生まれ故郷に近い内子のまちづくりを

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