雑誌「チルチンびと」別冊38号掲載 広島県 木ごころ㈱坂田工務店
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P74 広島県東広島市に建つ坂田工務店のモデルハウス。自社の伝統的大工技術を生かしつつ、若い世代の生活をカタチにしたいという髙原社長の考えのもと、建築家・吉田桂二氏が率いる連合設計社市谷建築事務所の越野俊さん、仙道香理さんらが設計した。 越野さんは、東広島市西条の風土を読み解き「西条の溜め池文化をヒントに、中庭に池をつくり、盆地気候の暑い夏に涼風を採り入れる」ことを提案した。仙道さんは、「暮らしをつくる家具や食器・小物と音楽を考えたシンプルな空間」を提案。髙原社長は、知人が開発した「鑑賞魚用水浄化システムを採り入れ、池をビオトープに」と、知恵を出し合った。  「このモデルハウスでは、ダイニングとリビングを階段でつなぎながら仕切る、勾配天井から水平に外に突き出るライン、室内建具は垂れ壁をなくし、欄間ガラスで採光する設計が重要なポイントでした。このデザインは、レベルの高い大工技術だからこそ成立します」と越野さんは、坂田工務店の技術力に感心しきり。 こうしてできたモデルハウスには、日々たくさんの見学者が訪れている。  「お客さまがなかなか帰らないんです」と笑う髙原社長。来場者は、あちらこちらに座り、空間や開口部が切りとる景色を3時間も堪能するという。この家は、生活の時間の質を豊かにしてくれる。 宮大工の建てる 確かな住まい 広島県北部の山間部、広島県安芸高田市に本社を構える坂田工務店は、昭和21年に創業した三代続く宮大工工務店だ。社員11名が皆大工だという。 モデルハウスの棟梁・樫本隆弘さんは54歳。16歳から坂田工務店で修業を積んできた、同社の中心となる棟梁だ。「私の仕事は、図面から設計者の思いを読み取ること」と語る。越野さんは「難しい納まりも、考えて答えを出してから聞いてくる。こちらは、

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