雑誌「チルチンびと」95号掲載 広島県 ㈱坂田工務店
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地元の風景に合う家を。住まい手の思いを、宮大工工務店がかたちにする設計・施工=木ごころ ㈱坂田工務店 広島県東広島市 石井邸 写真=酒谷 薫 揺れる稲穂越しに二つの家が向かい合っている。片方は親が住む、築50年の民家。もう片方は昨年竣工した息子夫婦の新居。しかし、積み重ねてきた時の重みは、ほぼ変わらないように見える。その印象を生んでいるのは、ともに腰板を張った真壁造りと、屋根に葺かれた赤瓦だ。しかも棟の両端には堂々たる鬼瓦を据えている。「新幹線の車窓から、山々の間に赤瓦の家並みが見えると、〝八本松に帰ってきた〟と胸に染み入るものがあるんです」とご主人が語る石州瓦。 来きまち待という黄味を帯びた独特の赤褐色をしたこの瓦は、島根の石見地方で古くより生産され、淡路・三州とともに、日本三大瓦と言われている。耐火度の高い「来待釉薬」をかけ、高い焼成温度で硬く焼き締めるため、積雪時にも凍結割れしない。石井さんの住む八本松は広島市から東に30キロほどだが、盆地ゆえに冬は厳しく積雪も多い。こうした風土性からこの地域では伝統的に石州瓦が使われてきたのだ。

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