雑誌「チルチンびと」77号掲載 広島県「木ごころ㈱坂田工務店」
1/4

チルチンびと 「地域主義 工務店」の会 のびのび暮らせる 濡れ縁のある平屋 30年ほど前に建てられた奥さんの実家の隣に、 同じ工務店の手で、昔ながらの開放的な住まいが完成。 新旧二つの家が周囲の風景に溶け込むように佇む。 広島県木ごころ ㈱坂田工務店 写真=輿水 進 文=鈴木和宏 右/濡れ縁でくつろぐ奥さんと子どもたち。冬はマイナス5~7℃にな ることもあり、屋根には石州の釉薬瓦を使用。 左上2点/窓辺には障 子を多用。 左下/山あいの盆地。緑豊かな風景に溶け込むように奥さ んの実家と並んで建つH邸。 った。「長年ご実家の家守りをして まいりましたが、再び当社をご指名 いただき光栄です」と、同社社長の 髙原良彦さんが笑顔で話す。  家づくりに際してHさん夫妻から 出された要望は、建物は平屋で、共 働きでも家事がしやすく、いつでも すっきり暮らせる家。  これを受けて、設計を担当した髙 原さんが提案したのは、玄関から直 接洗面所につながる裏動線や、水ま わりスペースに回遊動線を配するな ど、暮らしやすさを徹底的に追求し たプラン。収納についても、玄関脇 の土間収納をはじめ、キッチンの壁 面に設けた食品庫、小屋裏にも大容 量の収納スペースを確保している。  置き家具を最小限に抑えることで、 室内をすっきりさせ、掃除の負担を 減らしている点も見逃せない。「子ど もの頃、母が実家で食卓の椅子をど かしながら掃除する姿を見て大変だ なと思ったんです」と奥さん。ソフ ァや食卓、椅子、テレビ台といった 置き家具の代わりに、リビング・ダ イニング兼用のオールシーズン使え る掘り炬燵や、テレビが置ける棚を あらかじめ造り付けてもらったとい う。  風通しがよいのもこの家の魅力だ。  広島県東広島市の山あいに建つH 邸は、端正な切妻屋根の平屋建て。 外壁は漆喰と板張りで仕上げ、屋根 にいぶし銀の和瓦を載せた佇まいは、 どこか懐かしい雰囲気を漂わせ、周 囲の自然にもなじんでいる。  Hさん夫妻は、長女の小学校入学 に合わせて家づくりを決意し、奥さ んの実家の隣の畑を農地転用するこ とにした。「家づくりの絶対条件は 自然素材で建てることでした」と奥 さん。これまで暮らしていたマンシ ョンは結露やカビがひどく、ご主人 以外は全員ぜんそくに悩まされてき たという。特に二人のお子さんは毎 日家での吸入が欠かせないほどで、 医師に「住環境を変えるのがいちば んの薬」と言われたそうだ。  ハウスメーカーや工務店をあれこ れ見てまわった夫妻が、最終的に白 羽の矢を立てたのが、木ごころ㈱坂 田工務店だった。同社は創業 60 年余。 木の家にこだわり、昔ながらの手刻 みを基本に自社大工を多数擁する地 元工務店だ。 「最後に3社まで絞り込みましたが、 坂田さんの建てる家がいちばん『本 物の木の家』という感じがしたんです。 断熱材まで自然素材(羊毛のウール ブレス)と聞き、健康住宅という点 でも安心でした」と奥さんが振り返る。 実は、奥さんの実家を 30 年前に手が けたのも、ほかならぬ坂田工務店だ 「この家に暮らし始めて ぜんそくが治まりました」 158

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る