雑誌「チルチンびと」95号掲載 奈良県 ㈲倭人の家建築
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169かかった人が思わず入りたくなるような雰囲気をめざして開放感を大切にしました。地域の皆さんに本物のよさに触れていただくサロン的な場になればと願っています」(安田さん)。 永井さんが腕を見込んだ職人は、大工の田中正則さん・友ゆ隆たかさん父子、左官の松本善充さん、建具の和田崎充也さん。永井さんが「今回はとにかく昔ながらの工法にこだわりました」と話すように、モデルハウス建設は、それぞれのもつ技を継承する場ともなった。 田中さん父子は、釘などの金物をいっさい使わない、車しゃ知ち栓せんと込こみ栓せんによる家づくりを行った。正則さんは「最近はここまで伝統工法に徹底した家はないので、息子にとっていい勉強の機会をいただきました」と振り返る。友隆さんは半年かけてすべての材を手刻みした。「どの木をどう生かすかといった見立てが難しかった。父に聞きながら、一つひとつ進めていきました」と話す。 松本さんは、壁の下地を石膏ボードではなく木摺りとし、さらに布海苔を煮て漆喰に混ぜたものを3層に塗り重ねた。そして和田崎さんは、障子や雨戸などの建具類を、無垢の木を使って昔ながらの方法でつくりあげた。二人は「一人でも多くの人に伝統の美しさを体験していただきたい」と声を揃える。 人びとの力を結集して生まれた空間は、今後、地域に本物の木の家の素晴らしさを発信していくことだろう。243安田勝美建築研究所安田勝美さん倭人の家建築新子康次さん大工田中友隆さん左官松本善充さん倭人の家建築永井康雄さん倭人の家建築栗山武久さん大工田中正則さん和田崎建具製作所和田崎充也さん大工・建具・左官の伝統技が随所に光る所在地:奈良県五條市モデルハウス兼ギャラリー 敷地面積:100㎡延床面積:16.56㎡ 竣工:2017年10月  (工期2017年5月~10月)設計: 安田勝美施工:㈲倭人の家建築構造形式:木造軸組主な外部仕上げ 屋根=三州純いぶし瓦 軒天井=吉野杉板 外壁=本漆喰主な内部仕上げ 天井=吉野檜、     登り梁の上吉野杉板  壁=本漆喰 床=吉野檜、無地フローリングリビング・ダイニングキッチン

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