雑誌「チルチンびと」87号掲載 人を生かし、風土を生かす家づくり 奈良県 ㈲倭人の家建築
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176切ったばかりの檜は樹齢およそ300年。伐採した新子耕平さんが「これほどの木を伐採するのは、もしかすると一生に一度かもしれない」という大木だ。永井製材の敷地で乾燥中の木材。永井製材は永井さんの父の代から吉野で製材業を営み、約60 年の歴史がある。吉野の銘木市場。屋内の展示スペースには、檜の一枚板、杉の天井板などに製材された木材がズラリと並ぶ。明日香村にある飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)の社務所。倭人の家建築が手がけた事例で、外壁には高野槙(コウヤマキ)を、玄関の格天井には杉をふんだんに使っている。銘木市場の板の前で「吉野の材をもっと知ってもらって需要拡大につなげたい」語る永井さん。落する状況があった。伐採現場で指揮をとっていた新子康次さん・耕平さん父子は、「120年生の木の場合、我々のひいおじいさんの世代が山に入って草取りや枝打ちなど手入れをしてきた歴史がある。山と消費者を結ぶ倭人の家建築の取り組みによって、こうした木が正当に評価され、そして使ってもらうきっかけになれば」と話す。 山主である栗山武久さん・修さん父子も、吉野の林業の現状への危機感は同じだ。「吉野には長年『山守制度』と呼ばれる分業システムが根づいていましたが、今では需要減により、その制度も一部崩れてきています。この山を受け継ぎ、次の世代へと渡すのが私たちの役目だと思っています」。 こうした思いのもと活動を続ける中で、永井さん、栗山さん、新子さんを中心とするネットワークもさらに広がっている。「当初から地元の大工と協力していますし、そのほか左官や家具なども地元の職人に依頼し、自然素材を使った家づくりを行っています」(永井さん)。

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