雑誌「チルチンびと」92号掲載 京都府 ㈱彩工房
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140家族の記憶をつなぐ改修 「こうと」とは「地味で控えめだが、ほのかに華やか」な美意識を表す。「新旧の劇的な対比や、時が止まった町家の美の再現を狙ったわけではありません」と北尾さん。目的は古いものを残すことではなく、家族の記憶を「ゆるやか」な時間の流れの中でつなぐこと。そのためには、風土の知恵を生かしながら肩肘張らずに暮らしたい。子どもが成人した時には、さらに手をいれることも必要だろう。だから改修工事は、隅々まで自分の目が届くものにしたかった。 そこで求めたのが、「お出入り大工」。家人と相談し、その意を汲んで仕事をし、時々で小さな修繕もする。信頼でつながった大工や職人が、京町家を支えているのだ。白羽の矢を立てたのは、森本均さん率いる彩工房。 予定調和的につくる新築とは異なり、改修では壁や天井を剥がしてみて初めてわかることばかり。北尾さんも現場に常駐してスケッチを起こし、皆で知恵を出し合い、さながらジャズのセッションのように創意工夫を1324

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