雑誌「チルチンびと」92号掲載 京都府 ㈱彩工房
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21453138中高層マンションが垣間見える京都市中心部の住宅地。北尾邸ではこの日、建具を夏のしつらえに替えた。座敷では、御簾の向こうでわんぱく盛りの兄弟が遊んでいる。「建具を替えて季節を過ごしやすくするのは、京町家の知恵。こんなささやかな季節の行事も、子どもたちの思い出になれば」と、兄弟の父・北尾靖雅さんは目を細める。 かつて両親とともに、この町家に住んでいた北尾さん。ひとたび離れたものの、両親との新たな近居生活を機に、いずれ我が子も住み継ぐだろうと2年前に改修をした。1930年代後半に建てられたこの町家には約80年の歴史がある。持ち主も用途も幾度か替わり、相応に傷みもあれば、断熱・採暖の問題から冬の過ごしづらさもあった。 大学で建築学を教える北尾さんが念頭においたのは、京町家の素質を蘇らせ、現代の生活に生かす改修。傷んでいた箇所を直すのはもちろん、町家に宿る先人の知恵で現代の問題を解決することだった。北尾さんは京ことばで「こうとに改修させてもろたんどす」と言った。1近居する両親も交えて三世代で北尾さん一家は暮らしている。 2キッチン背後の壁は大壁にして断熱。台所(だいどこ=食事室)や居間は真壁とした。 3座敷から台所を見る。寒い時期はガラス障子に。 4玄関から坪庭までを見通す。 5台所から座敷を見る。夏季には無双の建具を障子紙を貼らずに風を通す。 左ページ/御簾の奥、座敷で遊ぶ兄弟。雪見障子の向こうは坪庭。住まい手のこだわり

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