雑誌「チルチンびと」別冊47号掲載 愛知県 ㈲勇建工業
2/4

 愛知県は名古屋駅からほど近い住宅街。新築の住宅に混じってぽつぽつと古い長屋も残るまちなみだ。この一角に建つ、かわいらしい古民家が今回訪ねた丸田邸だ。 玄関扉を開けると、昔ながらの洗い出しの土間に漆喰の壁の玄関スペースが奥へ続く。新しく施された仕上げも、天井や建具、柱などの古い材となじみ、どこか安心感を覚える。「以前は奥に進めば進むほど暗く寒くなる長屋で。でも今では快適に過ごせる家に生まれ変わりました」と、うれしそうな丸田夫妻に迎えられ中へ。 三和土の左側には和室。奥へ進み引戸を開けると、驚くほど明るいダイニング・キッチンが現れた。立派な古い梁が現しとなった天井には天窓が。そこから落ちる光が、白い漆喰の壁に反射してさらに空間を明るく開放的に感じさせている。 この家は、およそ築80年の長屋で、空き家状態となっていたご主人の祖母の住まいだった。そこに結婚した丸田さん夫妻が住むことに。古いままの長屋は、天井も低く、部屋も細切れで光が入ってこない、風呂は狭く洗面台もない、ネズミが出る……など、不便なことばかりだった。しかし、立地がよかったことや、小さい頃からなじみのある場所でもあるということ、経済的な面などを総合的に考え、改築して住左上/何十年もこの家を見守っている古時計。 右上/古い柱と塗り直した土佐漆喰のテクスチャー。 右下/さりげないしつらえが漆喰の壁に映える。 左下/古い簞笥も食器棚として復活させた。洗い出しの土間、漆喰の壁、古い材や建具が、雰囲気のある玄関を演出。右/玄関突き当たりの壁は色のある京錆土を塗った。窓にはめた古いガラスは、この家にあった本棚についていたもの。 左2点/この家に使われていた建具を再利用。型ガラスも今や貴重品。左の建具の格子細工は、建具職人が部分的に修復した。73

元のページ 

page 2

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です