雑誌「チルチンびと」96号掲載 愛知県 ㈲勇建工業
5/6

186上/キッチンは床レベルを下げてダイニングテーブルに座る人と目線の高さを揃えた。キッチンのカウンターは勇建工業がクルミ材で造作した。壁には藍色の漆和紙を貼ってアクセントに。襖にはヤコブセンの壁紙を貼った。 下右/子ども室からダイニング越しに庭を見る。 下左/趣ある古建具とモダンな襖が調和する。類もできるだけ元のものを生かし、足りないところは新たに勇建工業がつくった。「新しい建具も、塗り直した壁もすべて自然素材ですから、130年前の材に負けることなく、調和してくれます」(加村社長)。 中でも家族が最も長い時間を過ごすLDKは、新旧が混じり合った美しさが際立つ。かつての3部屋分がひとつながりとなった空間は、飴色になった梁や柱と新設した開口部の木製建具が調和する。古民家の寒さを解消するため蓄熱床暖房を採用し、床には石灰岩を敷いた。また、夫妻が大切にしてきた北欧家具やオブジェが和の趣にモダンな彩りを添えている。「新しくつくった襖にヤコブセンの壁紙を貼ってみたり、夫婦で楽しみながらインテリアを考えました」(一真さん)。 お子さんの小学校入学のタイミングに合わせ、居を移した岡本さん一家。奥さんは「この家に暮らしてまだ一カ月ほどですが、子どもたちがテレビを見たがらなくなりました。家や庭を駆け回っている姿を見ると、よかったなと思います」と笑顔で話す。敷地内に設計事務所を構える予定の一真さんは「広い敷地やスペースを生かして、人が集まる場所になればと思っています」と今後に思いを馳せる。生まれ変わった古民家は、新たな住まい手とともに、さらなる歴史を刻んでいく。

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る