雑誌「チルチンびと」96号掲載 愛知県 ㈲勇建工業
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183上/広い玄関土間。「機能のない空間こそが家を豊かにすると考え、土間のまま残しました」(一真さん)。壁には地元・豊田の土を混ぜた土を塗った。 下右/ガラス瓦で天井から光を取り込む。大きな照明は京提灯の小嶋商店でオーダーしたもの。 下左/畳の間はお客さまにくつろいでもらうために設けた。 懐かしい住まいを         工務店と再生する名古屋駅から車で10分ほどの住宅街。瓦をのせた板塀に続く門をくぐると、庭の先には瓦屋根と虫籠窓が印象的な古民家が現れる。周囲にはマンションなども建つ中、ひときわ重厚な佇まいの建物が、建築家・岡本一真さんと奥さん、そして3人のお子さんの新たな住まいだ。「ここはもともと、私の祖父母が暮らしていた家でした」と話す一真さん。「父が転勤が多かったこともあり、私自身は1歳半までしか暮らしませんでしたが、お盆や正月には帰省していた思い出深い家です。長らく空き家になっていたのですが、年齢を重ねるほどに住み継ぎたいという思いが強くなりました」。実家とはいうものの、長年京都で建築家として活動し、家庭を築いた一真さんにとって、名古屋は数十年間離れていた土地。まして家族にとっては未知の場所でもあり、迷いもあったという。 そこで、まずは構造面で問題がないかの調査を行うことに。「4年ほど前になりますが、名古屋で古民家再生を手がける工務店を探し、勇建工業さんに相談しました」。勇建工業は、日本でも指折りの左官職人である加村義信さんが社長を務める工務店で、古民家再生から新築まで、伝統の技を生か

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