雑誌「チルチンびと」92号掲載 愛知県 ㈲勇建工業
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119宅設計を心がけたという。左官技術が光る壁 勇建工業の技術力がうかがえる箇所の一つは外壁だ。土佐漆喰で「掻き落とし」という伝統的な方法を用いている。「鏝こてで平らにした壁を束ねた稲穂の先で撫でることで、漆喰の中の砂が表面に浮かび上がり、独特の表情になります」と加村義信社長。家全体を均一に仕上げるため職人6人が1日で仕上げた。 現場近くに住んでいたIさん一家は、週末の度に足を運んでいたが、外壁工事に立ち会った時に「手作業なのに、壁面がどこも同じようにできあがっていくのを見て驚きました」。職人とも交流が深まり、長男は壁塗りを体験させてもらった。左官体験は初めてだった長男は、「重たくて塗るのが難しかったけれど、面白かった」と話す。 内壁の漆喰にも工夫が凝らされている。「通常より紙スサを多めに入れてあり、表面に細かい凹凸があるんですよ。それで光が反射せず、部屋が落ち着いた雰囲気になります」(加村社長)。音を吸収する効果も期待できるそうだ。真っ白い左官壁が青空に映えるI邸。小学校1年生になったばかりの長男が、広い縁側とリビングを元気に行き来するのを、Iさんと次男を起こした奥さんが温かく見守る。 Iさんは長男の小学校入学に合わせ、自宅の新築を考えた。「夫婦ともにアレルギーがあるので子どもたちが心配で、家は自然素材にしたいと考えました」。設計した田中敏溥建築設計事務所に自宅も依頼することにした。 田中事務所を通じ、施工は愛知県内に拠点がある勇建工業に頼った。Iさんは「展示場を訪ねたところ、木と漆喰の雰囲気がとても素敵でした」と振り返る。 元々左官業を主にしていた勇建工業は高い左官技術を有し、多様な塗り壁材を使いこなす。田中事務所の担当者・木下治仁さんは同社の技術を生かした住左官のこだわり、勇建工業 その頃、奥さんの実家が東京都内で家を建て替えた。Iさん夫妻は「白壁と梁の色合いややわらかな空気感に、ハウスメーカーにない魅力を感じて」(奥さん)、34

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