エコ建築考房「健やかに暮らす」住まいの家
9/54

008においの感じ方 嗅力の低下は、視力や聴力の低下と比べると自覚しにくいかもしれませんが、他の感覚と同様に、加齢によって能力が低下する傾向にあります。ただし、においの種類によって嗅覚の減退状況が異なったり、ふだんの生活の中でもにおいに対して敏感な人や鈍感な人がいるように、嗅力には個人差があります。風邪などの体調の変化の影響や、女性の場合は生理周期と関連があること、喫煙状況など生活習慣が嗅覚に影響することも報告されています。さらに、においに対する快・不快感は強さ以上に個人差が大きく、それまでの経験や環境が影響していると言われています。同じにおいであっても好き、心地よいと感じる人もいれば、嫌い、不快に感じる人もいるため、環境中に、においを漂わせたり、付加させる場合には周囲への影響についても配慮する必要があります。住まいのにおい 図2は2008年に北陸地域と関西地域で実施したアンケート調査の結果から、住まいのにおいの臭気強度と不快度を示します。夏季の台所ではにおいの強さ、不快度がやや高い傾向がみられますが、全体的ににおいの強さはやっと感知できる〜弱いにおいの程度で、不快ではないと感じているようです。嗅覚の特徴として、あるにおいを長時間嗅いでいると感じ方が弱くなる順応や、繰り返し嗅いでいるにおいはあまり意識しなくなるような慣れが起こりやすいことがあり、これらが影響していることが考えられます。自分の家のにおいには気づきにくいものの、他の人の家を訪問したときに家のにおいを感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。 図3は、日常的に居間で感じられるにおいの種類の回答割合を示します。住まいのにおい形成には、建材/家具材臭といった建物そのもののにおいよりも調理残臭、生ゴミ臭など生活にともない発生するにおいの影響が大きいことがわかります。ただし、においへの慣れの影響から全体として回答割合は高くはありませんが、夏季には建材/家具材臭が調理残臭、生ゴミ臭に次いで3番目に多く回答されており、やはり建材などのにおいも居住性に影響を及ぼす一要因であると言えます。また、「機器分析に基づく新築臭の測定・評価に関する研究」において飯泉らは、新築の住まいのにおい(新築臭)には内装仕様が影響していること、特に複合フローリング仕上げの床部位から放散されるにおいが大きく影響していることを報告しています。010203040(%)建材/家具材臭ペット臭たばこ臭冷暖房臭生ごみ臭調理残臭冬季夏季-4-3-2-1012345居間台所居間台所夏季冬季不快度臭気強度極端に不快強烈なにおい強いにおい楽に感知できるにおい弱いにおいやっと感知できるにおい無臭・不快ではないやや不快不快非常に不快(出典 萬羽郁子、五十嵐由利子、磯田憲生:住宅における空気環境と居住者の換気行動についての実態調査 第2報 北陸地域と関西地域の住宅を対象とした居間の臭気環境および居住者の臭気環境改善行動の実態、日本家政学会誌、61(10)、pp.655-669、2010を元に作成)居間で感じるにおいの種類(複数回答)図 3住まいのにおいに対する臭気強度と不快度図 2あるにおいを長時間嗅いでいると感じ方が弱くなるDATA : 02DATA : 03建材などのにおいも居住性に影響を及ぼす要因

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る