エコ建築考房「健やかに暮らす」住まいの家
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005 人と木は、古来より共存してきました。私たちは、食器、調理器具、玩具、家具など、木を使ったさまざまな日用品を製作し、私たちの暮らしの中で利用してきました。木を燃やして暖をとり、調理を行ってきました。そして何よりも、伝統的な日本の家屋は木造住宅でした。古来より、木は私たちの生活に欠かせないものとなっています。 その一方で、産業の発達に伴い、化成品やプラスチックなど、石油を原料としたさまざまな工業材料が開発されました。住宅でもプラスチックの内装材や床材が使用されるようになり、化学薬品の塗装でさまざまな色調が表現されるようになり、住宅の室内の雰囲気は大きく様変わりしました。工業材料の使用で私たちの暮らしは便利で豊かになったのは明らかですが、木に備わっていた長所を損なっているかもしれない、ということに私たちは気づいていないのかもしれません。 以前より、木は温度や湿度を調節する機能を有することが知られていました。奈良の正倉院では、校倉作りの建物の中で、およそ1500年にも渡って宝物が保存されていますが、カビなどの被害が発生せず良好な状態で宝物が維持されてきました。手や足が木に触れたとき、人は心地よく感じます。木には多くの空気層が含まれているため断熱性が高く、触れた時に体温が奪実験棟は本社屋敷地内にある。自然の木材を使った居住空間による健康の維持増進東 賢一(近畿大学医学部)萬羽郁子(東京学芸大学)

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