エコ建築考房「健やかに暮らす」住まいの家
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013建築基準法が認めるのは、最低ライン 下図は、私の事務所でまとめた大地震時の損壊状況の比較表です。まず知っていただきたいことは、建築基準法(以下、基準法)における耐震設計の基本理念は、「①稀に発生する震度5弱以下の中小地震に対しては損傷しない」「②きわめて稀に発生する震度6強程度の大地震に対しては、ある程度の損傷を許容するが倒壊せず、人命と財産を守る」ということです。言い換えれば、基準法では倒壊しなければある程度の損傷が許容されているということなのです。 その「ある程度」とはどれくらいか。まず基準法で示されている「倒壊」とは、下図Ⅴの「破壊」で、こんな被害を受けた家屋に人がいたら、圧死してしまうような状況です。基準法が定める「倒壊はしないがある程度の損傷を許容」しているのは、下図Ⅳの状態で、いわば最低限のラインと考えてください。私の家の耐震等級は? 「耐震等級」という基準は、地震に対して構造が倒壊・崩落しにくい度合いを示したもので、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)」の中の、性能表示制度によるものです(右ページ下)。 耐震等級は1〜3までランクがあり、3を最高としたものです。耐震等級1は、建築基準法と同程度の建物、等級2は基準法施行令第88条に定める地震力×1・25倍の地震力に耐えられること、等級3は1・5倍の地震力に耐えられることを目安としています。家を建てる方は、建築家や工務店に「私の家の耐震等級はいくつですか? 品確法の性能設計になっていますか?」と聞いてみてください。山辺豊彦(構造家)家を建てる前に知っておきたいこと震度6強程度の大地震に対しては、ある程度の損傷を許容するが倒壊せず、人命と財産を守る。層間変形角1/30〜1/10、倒壊は免れるひび割れ多大、破断あり土台の踏み外しモルタル、タイル脱落建具・サッシの破損、脱落折損座屈、剥離、釘めり込み困難層間変形角1/10以上 倒壊破断・移動あり、周辺地盤の崩壊モルタル、タイル脱落建具・サッシの破損、脱落折損脱落不可ⅣⅤ建築基準法=品確法 等級1建築基準法×1.5建築基準法×1.0大破破壊変形量※層間変形角:地震などの揺れで建物が変形するとき、各階の水平方向における変形の角度を示すもの。層間変形角θ=水平変位(δ)/階高(h)※※残留変形:地震が収まったあとに残っている変形のこと。耐震等級3耐震等級2耐震等級1品確法による耐震等級のイメージ稀に発生する地震による力の1.5倍の力に対して損傷しない程度稀に発生する地震による力の1.25倍の力に対して損傷しない程度建築基準法程度構造躯体の損傷防止(震度5弱程度の中地震)構造躯体の倒壊防止(震度6強程度の大地震)きわめて稀に発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度きわめて稀に発生する地震による力の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度建築基準法程度私の家の耐震等級は?【耐震】

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