エコ建築考房「健やかに暮らす」住まいの家
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009材料の種類とにおい 図4は、健康な大学生13名による材料のにおいの評価結果です。閉眼状態で30秒間においを嗅いでもらった後にアンケートに回答してもらいました。杉1と杉2は産地が異なるもので、いずれも落ち着く、親しみやすいなどの評価が高いですが、杉2のほうがツーンとする刺激感は弱く、より集中できると評価されていました。ゴム(ブチルゴム)は最も評価が低い結果となり、このときの評価では檜と合板(ポプラ合板、F☆☆相当)が似た結果となりました。各材料からの放散量分析を行ったところ、このときの実験で用いた檜や合板からは他の試料よりもアルデヒド類が多く放散されていたことが影響したと考えられます。 さらに、においを嗅いでいるときの脳血流量を測定したところ、いずれもにおい提示直後に脳血流量(酸素化ヘモグロビン)が上昇し、においに対する反応が確認されましたが、特に檜や合板に対しては血流上昇が大きく、より強い刺激があったことが示唆されました。この実験で用いた杉1や杉2のように無垢材のにおいは、親しみがある落ち着くにおいとして評価されることが特徴であり、刺激性の高いアルデヒド類が多く放散された材料との違いがみられました。 杉や檜の落ち着くにおいの正体はフィトンチッドといわれる揮発性の物質といわれ、中でもピネン、リモネンなどテルペン類のにおいはリラックス作用があることが報告されています。また、最近、檜や杉から抽出されるセドロールの効果も注目されています。セドロールはにおいとして認知されにくい成分ですが、鎮静作用があり睡眠改善などの効果が報告されています。よい香り成分であるテルペン類も濃度によっては刺激性を感じる場合や、他に刺激性の高いアルデヒド類など多く含む場合にもにおいの印象は変わってしまいますので、乾燥の条件などで工夫する必要があります。なお、現在、一般的には内装仕上げにはホルムアルデヒドなどの刺激性の高い物質の放散量が抑えられた合板が使用されています。 また、杉や檜についても産地や乾燥条件によって放散物質が異なることが報告されています。図5は、大学生(女性)32名による乾燥条件が異なる杉と檜のにおいの評価結果です。同じ大きさにカットした木片をバイアル瓶に入れてにおいを嗅いでもらいました。低温乾燥に比べて高温乾燥でより酸っぱく、焦げたようなにおいであると評価されました。ここで用いた材料では高温乾燥によ0246810集中できる落ち着くツーンとする好きスギ1スギ2ヒノキ合板ゴム親しみやすい-2-1012杉(高温乾燥)杉(低温乾燥)檜(高温乾燥)檜(低温乾燥)甘い-酸っぱい生臭い-焦げた非常に甘い/焦げたかなり甘い/焦げたどちらでもないかなり酸っぱい/生臭い非常に酸っぱい/生臭い0246810集中できる落ち着くツーンとする好きスギ1スギ2ヒノキ合板ゴム親しみやすい材料の種類とにおい評価図 4乾燥条件とにおい質図 5無垢材のにおいは、親しみがある落ち着くにおいとして評価DATA : 04無垢材でも高温乾燥は低温乾燥に比べ、酸っぱく焦げたにおいがするDATA : 05

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