雑誌「チルチンびと」59号掲載 静岡県 家和楽工房 植松一級建築事務所
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1ページ やわら 静岡県・家和楽工房 植松一級建築事務所 地域に根ざした アーキテクト ビルダー 富士山の麓、自然素材と手づくりのアートに囲まれて 大家族が仲よく暮らす。この家は、地域の風土を 知り尽くした設計者の、住まい手への思いにあふれている。 富士山の南麓、富士川沿いに位置する静岡県富士市。江戸時代には東海道の宿場町・吉原宿を擁してにぎわいを見せた。気候の温暖なこの地で、F邸はやわらかな光を受けて佇んでいる。屋根は隣県・愛知から取り寄せた素焼き窯変の三州瓦。釉薬をかけずに2度焼きすることで浮き出る色のグラデーションが、洋風の外観によく似合う。訪れた者の目を引くのは玄関ポーチの壁に配されたステンドグラス。太陽の傾きによって、透過した美しい光が壁や地面に落ちる。 「暖色系を中心に、かわいらしいもの、やわらかいものをデザインに取り込んでいます」と語るのは、この家を設計した家和楽工房の植松章さん。地元材を中心とした木や土などの自然素材を使って家づくりをしているのも、ほっと安らぐ空間をつくりたいとの思いからだ。  この家には施主のFさんご一家が、3世代の大家族で暮らしている。一家が集まって団らんできる場所が、2階に設けられたリビング。構造材を現しにした空間に、南面には掃き出し窓と、その上に高窓を設け、部屋いっぱいに光を取り込んでいる。 「ご家族が皆、明るい人たちばかりだから、部屋も明るくしなきゃと思って」と植松さん。室内に差し込む光は、漆喰壁の風合いを浮かび上がらせる。  また、電話台はアサダ、テーブルはシオジなど、独特の木目や色合いを生かした家具が印象的だ。これらの家具は、木は地元の谷田木材で施主と相談しながら選び、大工が制作。さらに、手づくりの家に似合うように、食器棚や食卓の椅子は、静岡市の家具職人が制作したものである。  

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