雑誌「チルチンびと」97号掲載 石川県 さとやま工房
3/4

156り建てられなかったという。熟慮した結果、このタイミングで気持ちのよい場所に住み替えることを決めた。 家づくりの核となったのは薪ストーブだ。依頼先よりも先に、薪ストーブのメーカーを決めていたほど、ご主人の思い入れは強かった。自然素材を使った家にしたかったという夫妻。地域の工務店を回ったが、希望する家を建てられる業者は見つからなかった。ハウスメーカーとも話を詰めたが、「使用する木材に制限があるなど妥協しないといけない点があった」と振り返る。 そんな思案のさなか、奥さんはさとやま工房の岩井庸之介社長が経営するカフェにたまたま立ち寄ったという。カフェにある薪ストーブについて説明してくれたのが、岩井社長その人だった。自然素材を使った家づくりについて相談すると、「当社なら建てられますよ」との答えが返ってきた。渡りに船とばかりに、依頼先を同社に決めた。 さとやま工房は現時点で石川県内唯一の『チルチンびと「地域主義工務店」の会』会員社。S邸を設計した岩井社長は不動産業も手がける。住み替えを考える建主にとっては、土地売却についても相談できる心強い存在だ。 S邸のコンセプトは、「1台の薪ストーブであたためる、風通しのよい家」。夫妻の要望は、収納は多め、檜を使った浴室、車庫から濡れずに玄関に入れるなど多岐にわたった。岩井社長は細かい注文にもていねいに対応してくれたという。 家族が好きな場所はもちろん薪ストーブの前。火入れはご主人の朝の日課だ。奥さんは「キッチンから見る景色も好き。四季を通じて楽しめる庭もつくりたい」と話してくれた。 年配の大工さんからは、「本物の木をつなぐ仕事だから、仕事をしていて気持ちがいい」との声も。「そう言ってもらえて嬉しかった」と奥さん。「家は本来、ていねいにつくるもの」とは岩井社長の弁。建主も、工務店も、職人たちも皆が幸せを感じる家づくり。「木の家にみんなが癒されるんです」。岩井社長のこの一言がすべて言い尽くしている。木の家に癒されて1・6漆喰壁をバックにした造作棚には、北欧好きの夫妻が集めた小物が飾られている。 2休日は薪探しに行くご主人。軽トラックもチェーンソーも斧も揃えたという。 3ヨツール社のF-3。敷石には小松産の日華石を使っている。 4キッチンと階段には棚をつくってもらった。5玄関と通り土間。庭に抜けられる。645321

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る