雑誌「チルチンびと」別冊9号掲載 新潟県 冬は炎に夏は涼風に家族が集う
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1231障子を閉めきると、南北からのほのかな光に包まれる落ち着いた室内になる。 2裏に隣接する家からの目隠しは、植栽と高さを抑えた開口。3洗い出しの三和土に立った地点から、大梁、吹き抜け、ロフトまで一気に視線が通り圧巻。4土佐和紙張りの和室襖と、赤土に藁スサを混ぜこんだ塗り壁。5やさしい杉肌の色、漆喰壁の白が端正な階段。6樹齢約70年の山北町産杉梁に乗っかるような2階書斎コーナー。7床も建具もメイドイン新潟。土佐和紙の染め色が渋いアクセントに。じいちゃんたちは、こんな感想を残していくという。 1年ちょっと前まで「普通の工務店」だったという野本建設が、新潟に根ざした自然素材住宅をつくる工務店に変身するきっかけとなったのは、『チルチンびと「地域主義工務店」の会』との出会いだったと、野本さんは言う。ちょうどその頃、同じ新潟市に工務店の会メンバーの大幸・ピュア事業部(当時)が、田中敏溥さん設計のモデルハウス「自然素材の家」(『チルチンびと』別冊7号に紹介)をオープンさせたのに大いに刺激され、うちも展示場をと意欲が湧いた。 そこで、泉幸甫さん設計の住宅を見学し、お願いすることを決める。土を使っていること、新しい和を感じること、新潟で受け入れられるデザインであることなどが理由だった。 泉さんは予定地がさら地のときから何度も現地を訪れ、敷地をにらんだり、隣の家の高さを測定して行ったりした。「ハウスメーカーのような家でなくて、街並みに合った家をつくりたいんだ。そうしていけば100年後にはいい街並みができるよ」と語ったのが、野本さんには印象に残る。 見えない部分にまで無垢の杉を使うこと、蛍の舞う池と木のある庭、それにショップも、1380平米の敷地につくってほしい野本建設が出した注文内容はそれだけ。建築家は、白いキャンバスに絵を描くように、住宅を建て、庭をつくり、ショップをと、図面を描きながらつくり上げていった。 東京の建築家が地方に現場をもつ不便さは、泉さんの弟子の伊藤誠まさ康やすさんが新潟に滞在し現場を担当するという工夫で乗り切った。「伊藤さんが現場に詰めていてくれたおかげで、〝納まりが完璧になりました。こういう家をつくれるようにならなければと思いました」と野本さんは話す。「素顔の家」は延べ床面積が165平米の、現代の新築住宅としてはちょっとしたお屋敷である。地域に住む30〜40代に手が届くモデルとなりうるのだろうか。「私たちには手が届かないのでしょうね」、見学に来たお客さんによく言われるそうだ。2建築家の仕事ぶりに感心お客さんにはコストの下げ方を提案

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