雑誌「チルチンびと」別冊15号掲載 新潟県 ノモトホームズ 株式会社 野本建設
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寝室にも障子を付けた。心地のいい場所だが、金子さんは「居間が快適なので、寝室にいるのは寝るときだけです」。 右/エネルギー効率などを考えて、北側は開口面積を少なくした。奥さまの希望で、キッチンは引戸で隠せる。左/2階ホールはご主人の書斎スペースでもある。 を心地よく楽しめるのだ。野本建設社長の野本一隆さんは、地域に根ざして良質な家をつくっていくためには、自社の設計力を高めることが必要だと考えている。その方法の一つが建築家と協働することだった。  伊藤さんが野本建設で設計する家は、広間を中心に各部屋がつながる、ワンルームが基本だ。「家族のコミュニケーションのためと、新潟は気候が厳しいので、ワンルームにして部屋ごとの温度差を少なくし、南北に窓を設けて風を通すことを考えています」と伊藤さんは言う。  金子さんは建築設備の仕事をしているので、図面を読むのが苦ではない。「伊藤さんの図面はていねいで細かいので分かりやすく、具体的なイメージが湧き、こうしてほしいという要望がいろいろと出てきました」と言う。吹抜けをなくしてみたり、家相に詳しい父上の意見を取り入れたりして、たびたび変更した末、できあがったこの形は最初の案に近い。モデルハウスに一目惚れした金子さんは「その縮小版です」と満足気だ。  現場が始まってからも、つくり手とやりとりして変更した部分がある。特に金子さんの思い出に残るのは広間の壁の特注の灯具だ。議論を重ねた甲斐あって、それは空間を十分に引き立てるものになった。「設計の伊藤さん、営業の木村さん、現場の長谷川さん、いろんな人に参加してもらって意見を出し合い、家をつくりたかった。それが叶いました」。  2階のホールは、片側に本棚と机を造り付け、ご主人のワークスペースに。ここなら奥さまが階下にいても、自然に会話ができる。中学高校の多感な時期に、3世代7人で一つ屋根の下に暮らしていたというご主人は、「家に帰れば必ず誰かがいましたね」。自分が育ったその家が、この家を建てるときの原風景となったことが、言葉の端々から窺える。  床に腰を下ろしているだけで、なんとも穏やかな気持ちになる。窓を開けると、瑞々しい風がすっと室内を通り抜けた。 68

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