雑誌「チルチンびと」別冊15号掲載 新潟県 ノモトホームズ 株式会社 野本建設
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上/広間の南面はほぼ全面障子。桟が細いので、すっきりした印象だ。真ん中の木の照明シェードは特注。下右/ホールを支える成1尺6寸の梁と、棟に渡した太鼓梁が見事。下左/広間の北側は階段や食堂スペース。  黒い杉板で覆われた外壁。その一角に設けられた木戸を開け、大屋根の下、車庫を横目に玄関まで進むと、まるで路地を歩くような気分になる。壁の木製格子から光がやんわり入り、心憎いばかりに情感豊かな玄関アプローチである。  その風情に感じ入っていると、施主の金子さん夫妻が出迎えてくれた。ともに車が好きな二人は、冬の雪から大事な車を守るためにも、きちんとした車庫がほしかったのだという。  外観の凛とした表情とは打って変わって、家の中はふんわりとした空気に満ちている。そっと手を触れたくなるような、やさしい質感を持つ県産杉の床と漆喰の壁。障子の端正で控えめな佇まいがそれらと相まって、清らかな空間が生まれている。そしていかにも頑丈そうな成1尺6寸の梁が空間を引き締めている。  仕事から帰った二人が多くの時間を過ごすのが、この広間だ。上は吹き抜けで開放感がある。厚さ30ミリの無垢の杉板の床は、遊びに来た友人が「床暖房なの?」と尋ねるほど冬でも暖かく、しかもやわらかい。だから、「いつも床の上でごろごろして、そのまま寝てしまうこともあります」と言う。  結婚を機に家を建てることを決めた金子さん夫妻。地元新潟を拠点とする野本建設のことは、『チルチンびと』を見て知った。仕事が忙しいご主人に代わって、先にご両親がモデルハウスを見に行ったところ、帰宅した父上が「絶対、野本だ」と太鼓判を押した。そこで翌週、金子さんも奥さまと一緒に展示場を訪れた。「入った瞬間から杉の香りがして、帰りたくなくなって。心からこの家に住みたいと思ったのですが、自分たちの予算では無理ではないかと」。しかし、営業担当の木村さんの「進めてみましょう」という一言に力を得て、金子さんは野本建設と家づくりを始めることになった。  野本建設は2年前から、建築家の泉幸甫さんが中心になってつくった「izm―地域主義建築家の会」の伊藤誠康さんと組み、伊藤さんの設計による家を建てている。この家のプランやディテールにも、泉さんの考えを基にした伊藤さんのアイデアやセンスが随所に見てとれる。例えば、木をふんだんに使いながらも、木の印象ばかりが前面に出ないよう端部を処理している。こうした細かな配慮があるからこそ、木の存在感66

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