雑誌「チルチンびと」80号掲載 神奈川県 ㈱高棟建設工業
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は「できるだけそのままで」という こと。現場監督の大木康弘さんや高 棟の大工たちはその思いを汲み取り、 ほぞ穴や傷も隠さず味として残すこ とを選んだ。  人の手で加工された古材の味わい は格別だが、取り扱いには経験を重 ねた大工が欠かせない。建っていた 元の土地の気候から傷み具合を想 像して使える材の見当をつけるこ と、均一ではない幅や長さを現場合 わせで水平垂直をとっていくこと ―。そんな古材との駆け引きに対 して「作業しているときは大変だけ ど、できてしまえば苦労も吹き飛ぶ よ」と大木さんは笑う。根をつめる 作業の一方で、釘隠しをボルト隠し として使う遊び心も。設計者も大工 も苦労を楽しみながら家づくりを進 め、“蔵の家”は完成した。 「日本のすぐれた建築を次の世代に 残したい」と語る髙橋社長。手間暇 かかるけれど、それでも高棟建設工 業が古材を扱う理由は、いいものを 残し、鎌倉の風景に合う景観をつく りたいという思いから。  老舗工務店の技術で叶えられた蔵 を移築した住まい。古き美を愛する 建主とともにこの地に根づき、新た な時を刻み始めた。 「夏は土間を開け放して食 事をするのが楽しみ」と奥 さん。ご主人憧れの薪スト ーブで冬も暖かく快適に。 上:光溢れるLDK。持っていた掘り炬燵の天板の大きさが合わ なかったので、蔵のケヤキを継ぎ足した。 下:キッチンカウ ンターの腰壁には床材を活用。各地で見つけた古家具が並ぶ。

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