雑誌「チルチンびと」80号掲載 神奈川県 ㈱高棟建設工業
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古都鎌倉の一角に、移築した蔵で 建てた家が堂々と佇む。  大きな鉄製の玄関扉から一歩入る と、ほの暗い土間が広がる。暗がり の中、つやめくのは箱階段。その美 しさに一瞬で目を奪われる。リビン グと土間を仕切る格子戸と欄間から 漏れる光。繊細で格調ある雰囲気だ。  力強い梁をくぐった先の小上がり になったリビングには、陰翳礼讃の 世界から一転して、光溢れる空間が 広がっていた。古いものに囲まれて 不思議な懐かしさを覚えるとともに、 一つひとつに宿る歴史を肌で感じる。  Kさん夫婦の共通の趣味は、古民 具や古家具集め。こうして蔵を移築 して住んでいるのは、そもそもご主 人が20年以上も前から古民家に住み たいと思ってきたことに始まる。偶 然行き着いたのが、古民家を譲りた い人と住みたい人を結びつける「古 民家ライフ」のホームページ。掲載 されていた山形の蔵が気になり、見 学を申し込んだ。蔵を初めて見たと きの印象を「想像以上。圧巻でした」 と語るご主人。この蔵は客をもてな すための「座敷蔵」と呼ばれる山形 県特有の形式の蔵で、100年以上 前に建てられた。物を保管する一般 的な蔵とは違い、建具や箱階段など 細やかにつくりこまれている贅沢な 造りだった。 リレーでつなぐ移築計画  一目みて虜になったその蔵を鎌倉 へ移築できるだろうか? ご主人の 夢を叶えるため、リレーのバトン は「古民家ライフ」から高棟建設工 業に渡された。同社の髙橋正成社長 は明治30年に始まる工務店の四代目。 その伝統大工技術で新築だけでなく 古材を扱った家もお手のものだ。  ご主人がいちばん大事にしたいの しっとりした北鎌倉の風景に合う外観。杉の下見板張りの壁が印 象的。押縁は大工がていねいに施工した。 磨き抜かれた美しさを放つ箱階段。玄関から土間に入ると存在感に圧倒 される。引き出しは奥行きが長くたっぷり収納できる。 上:解体時に付けた部材の位置を示 す札。移築の思い出として残した。 左:蔵に残っていた照明。乳白色の ガラス越しに温かな光を灯す。 これはダミーです君はこれ から世界でいちばんタフな 歳の少年にならなくちゃい けないんだ。なにがあろう とさ。そうする以外に君が

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