雑誌「チルチンびと」薪ストーブ年鑑 2017 ㈱グッドリビング どんぐりの家
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1322階のすのこ廊下から居室を見る。左に一つ、奥に二つ部屋があり、手前側はバルコニーに通じている。障子の窓や漆喰の壁が、心落ち着く和のテイストを醸し出す。遊び心があるロフトスペースは、中学生の娘さんのお気に入り。友だちが泊まりにくると、布団を持ち込んで寝ているそう。2階の居室。プライバシーは確保しつつも、壁上部に隙間を設けることや吹き抜けに面した窓をつくることで、空気の流れを遮らないつくりになっている。どの部屋にいても同じように暖かい。間リビングをつくることだった。憲久さんは「家づくりというより、薪ストーブを楽しむことが目的になっていましたね」と笑う。土間リビングにしたのは、家の中でも外とのつながりを感じたかったのと、玄関を入ってすぐ暖かい家にしたかったためだ。 設計担当はこれを受け、全フロアをつなぐ吹き抜け、2階のすのこ廊下など、空気が自然に循環するプランを提案した。また、床には紀州杉、壁には藁・スサを多めに入れた漆喰を用い、自然素材のぬくもりを満喫できる空間をつくりあげた。 首藤邸の竣工は真冬だったため、入居後すぐに薪ストーブが活躍したが、夫妻はその暖かさに感動したという。「まるで季節が変わったような暖かさ! 外は真冬でも、家の中は春になったようなのです。さらに、ここは暑すぎる、あっちは寒すぎるということがなく、本当に家中隅々までぽかぽかなんです」と二人は声をそろえる。 夫妻には大学生の息子さんと中学生の娘さんがいるが、薪ストーブは団らんの形も大きく変えた。「薪ストーブの周りに自然と家族が集まって、炎を眺めながらその日の出来事を話す時間が生まれました」と明子さんは話す。20歳の息子さんは薪づくりに夢中で、よく憲久さんと一緒に庭で作業をするそうだ。「どちらかというとインドア派だったのですが、今では2時間くらい平気でチェーンソーを使っています。父子のコミュニケーションが増えたことと、息子の新たな一面を発見できたことは、薪ストーブの恩恵ですね」(憲久さん)。 一緒に年をとるのが楽しみな家と薪ストーブのぬくもりを手に入れた首藤さん一家。「家族全員料理好きなので、パンづくりや煮込みなどの薪ストーブ料理にも挑戦したい」と、楽しみは尽きない様子だ。

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