雑誌「チルチンびと」91号掲載 埼玉県 ㈱鈴木工務店
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176で居心地のいい空間に癒されたという。 打ち合わせの際にリクエストしたのは、平屋であること、焼き杉を外壁に使うことの2点。焼き杉は長谷川さんの作品で目にして、力強さに圧倒されたのだ。もう一つ、可能な限り大勢が入れる家に、とも伝えた。「うちはお客さんが20人ぐらい集まることもあるので」。ご主人が愉快そうに話す。「田の字型」の間取りを 現代にふさわしく表現 玄関を入るとリビングを中心にダイニング・キッチン、和室。子ども室もリビングまわりと一体にし、二人の思いを隅々まで反映した。「家族の居場所に友人を迎えたいと言われ、すべてオープンにしてはと提案しました。全体をワンルームのようにしつつ、建具を引き出せば各室を別々に使うことができます」と長谷川さん。そもそも日本の民家は襖などで部屋を分けるが、冠婚葬祭ではそれらを外して続き間とする「田の字型」の間取りがよく見られた。このお宅では、それを現代の生活にふさわしいかたちで右/ダイニング・キッチン。テーブルは食事だけでなく配膳や、子どもたちの勉強など多目的に使いたいという奥さん。その願いに応え、大工がタモ材で手づくりした。コンロとシンクは壁側に。パントリーも近くに設けてあり家事の効率もいい。表現したといえるだろう。 むろん、動線への配慮も忘れていない。水まわりがキッチンの南側なので洗濯物をデッキにすぐ干せるなど家事が手早くこなせるうえ、家の南に広がる庭で遊んで泥んこになった子どもたちが、ほかの部屋を通らず浴室に駆け込めるのもポイントだ。 材は、構造材が杉と松、床は杉のうづくり仕上げに。焼き杉はワークショップ形式でつくった。「夫妻を中心に、当社の社員も加わって頑張りました(笑)」。鈴木工務店の鈴木榮一社長が楽しそうに振り返る。 2017年1月、家が完成。寒い日にはご主人と長男、次男がペレットストーブを囲んでくつろぐ。冬は冷え込むが火を入れると家全体が暖まる。リビングのペレットストーブに赤々と火が燃え、長男も次男も自然に集まってくる。昨年秋に生まれた長女も奥さんに抱かれて団らんの仲間入り。「5人一緒に、ここで昼寝したいなあ」とご主人が目を細める。 「長谷川さんも鈴木工務店の皆さんも親身に取り組んでくださって、期待以上の家ができました。感謝の思いでいっぱいです」。満ち足りた表情で、夫妻が言葉を結んだ。

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