雑誌「チルチンびと」別冊35号掲載 埼玉県 ㈱小林建設
6/6

6ページ 踊り場を使ったスキップフロアのコーナ ーだ。ここには、奥さまの思いが反映されている。  「1階にちょっと隠れる場所が欲しいと設計の方に話したら、こんなのはどうかと提案してくださって。キッチンに近いので、料理しながら子どもたちと話せます。いずれ反抗期を迎えても、ここで本音が聞けるかしらと」  最後になったが、材について。県産材の活用に取り組む小林建設は、地域の材木店や製材所とのネットワークづくりも進めてきた。このお宅の場合、構造材はほぼ100%秩父の杉、床も県内のサワラ。ちなみに、1階は壁・天井とも珪藻土を塗り、木の見える量を抑えた。同社の小林伸吾社長は次のように話す。  「木の家ではあるけど、シンプルでモダンにと心がけました。結果として左官職の出番が多く、塗り壁の魅力を堪能できる家になったと自負しています」  壁の隅は直角でなくアールで仕上げられ、やわらかさを感じさせる。しっとりした質感のある土壁が間接照明の光に映えて、独特の雰囲気が漂う。  新生活に慣れ、ご主人は仕事の合間に裏の畑で野菜を育てはじめた。今年の夏はトマトが豊作で自給自足できたと笑う。  「まだ優雅な田舎暮らしにはほど遠いけど、空気はまったく東京と違うし、のんびりするね」  「緑が見えるのもうれしい」  奥さまが朗らかに言い添えた。

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る