雑誌「チルチンびと」94号掲載 群馬県 ㈱小林建設
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とともにパッシブデザインも熟考した。現在の家づくりでは、住まいのエネルギー収支をプラスマイナスゼロにする「ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)」としての性能が求められるが「ギャラリーhinosumika」は、機械設備に依存せずにZEHを実現する「パッシブZEH」という新しい概念を打ち出している(詳細は74ページ参照)。 吹き抜けのあるリビング・ダイニングは、広いデッキ越しに庭の景色を切り取る大きな窓を設け、断熱性能の高い木製サッシを採用。冬期の日中はOMソーラーに加え、薪ストーブの暖気が家中を温める。深い庇は、夏至冬至の太陽高度にも配慮した寸法で、ダイレクトゲインにも期待できる。また吹き抜けの2階部分には障子を設け、開け閉てすることで暖気の流れをコントロールするなど、昔ながらの日本の家にこめられた知恵も、随所に生かしているのが特徴だ。 新しい機械設備に依存するのではなく、温故知新の知恵と技術で、時代のニーズに対して自分たちでなければできない答えを出す。「地域工務店としての原点に立ち返りながら、新しい視点を打ち出していければ」と語る小林社長。「いちばん嬉しいのは近隣住民の方が、“ここにこんないい家が建ってくれて嬉しい”とおっしゃってくださることですね」と顔をほころばせる。「いい木の家を、正直に、ていねいにつくっていきたい」。そんなシンプルな思いが、ベーシックだけれども新しさを打ち出したモデルハウスを導いた。1234取材・文=植林麻衣721芦野石敷きの玄関土間。ちょっとしたカフェとして使うことも想定している。冬場は土間は冷えがちなので、リビングへの木製引戸は断熱性の高いものを広島の建具制作所に特注した。2・3・4玄関横のギャラリーコーナー。現在は小泉さんセレクトの生活道具を展示している。「将来的には、地元の作家さんにギャラリーとして使ってもらうことも考えています」と小林社長。

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