雑誌「チルチンびと」94号掲載 群馬県 ㈱小林建設
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四季の移り変わりをあらわす庭。何げない日常こそ豊かなものでありたいという願いを込めました」と小林社長は語る。小泉さんには、庭に建つ6畳の秘密基地「舎庫」の設計も依頼。書斎や家カフェ、アトリエなどになる、ちょっとした非日常を味わうことができる庵のような建物だ。地域工務店だから打ち出せたパッシブZEH そしてもう一つ注力したのが、温熱環境とエネルギー。同社は長年にわたりOMソーラーを採用しているが、ここでは太陽エネルギーでの採暖のみならず太陽光発電による創エネも行うことができる「クワトロソーラー」を搭載。さらにエネルギーロスを削減し、自然の営みによって快適さを保てるよう、高い断熱性能まい〟において貫けないものかと考えました」(小林社長)。 そのために今回は、設計チームに加えて家具・インテリアデザインは小泉誠さん、造園は小林賢二さんと協働。「毎日、肌に触れる木の家具や、当たり前のことをすべてにおいて貫く ただ、それを形にするのは容易ではない。「素材選びや空間デザインはもとより、家具などのしつらえ、馬という土地において、エアコンなどの機械にできるだけ頼らずに快適に過ごせるか。「地域工務店であることを突き詰めると、おのずとこうした答えが導かれたのです」(小林社長)。中敏溥さん。今回は、小林建設の小林伸吾社長をはじめとする設計士5名とチームを組んでデザインを詰めていった。小林社長が思い描いたのは、「地域に根ざすことの心地よさ」というコンセプト。どこにでもありそうでどこにもない心地よさ 2017年5月、群馬県高崎市の閑静な住宅街に、群馬・埼玉に拠点を置く小林建設のモデルハウス「ギャラリー hinosumika」が竣工した。 社名を謳う派手なのぼりの類は立てていない。しかし道往く人はおのずと足を止め、しげしげとその佇まいに見入る。それは、青空に映えるシンプルな切妻屋根や、びっしりと埋まった薪棚、青々と葉を茂らせる雑木からうかがいしれる、「何げない心地よさ」をこのモデルハウスが醸し出しているからだろう。どこにでもありそうで、どこにもない。そんな上質な心地よさを、このモデルハウスは体現している。 設計を手がけたのは、建築家の田 それは明快でありながら、その実、深淵な命題でもある。間取りや空間構成のデザインや暮らしの豊かさとともに、夏冬ともに厳しい気候の群庭の眺め、暮らしの愉しみ……一つひとつとってみれば、当たり前のことかもしれません。けれどもこれら当たり前のことすべてを、一つの〝住71345671リビングから北のダイニングを見る。北側にも庭が設けられ、風の通り道となる。「おざなりにされがちな北側も、気持ちのよい空間にしたかった」と田中さん。 2障子を閉めたリビング・ダイニング。 3採暖だけではなく、暮らしの楽しみをもたらす薪ストーブ。炉台は芦野石。 4ゆったりとしたキッチン空間。 5鮮やかな襖紙を使ったリビング横の和室。OMソーラーのダクトは押入れに隠している。 6階段吹き抜けまわりの書斎コーナー。

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