雑誌「チルチンびと」76号掲載 群馬県 ㈱小林建設
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チルチンびと「地域主義工務店」の会確かな腕と、確かな素材でつくる和の住まい杉板張りに瓦屋根の日本家屋。和の風情をこよなく愛する夫妻の希望を叶えたのは、伝統技術を受け継ぐ大工が支える工務店だった。写真=相原 功 黛まゆずみ邸が建つのは、富岡製糸場で有名な群馬県富岡市の住宅街。緩やかな勾配の瓦葺きの大屋根が周囲にしっとりとした風情をもたらしている。 玄関の格子戸を引くと、出迎えてくれるのは、木の香りにふわりとのった、薫たきしめられた香のにおい。 贅沢な鉄平石張りの玄関土間を上がると、太い曲がり梁と天井が現しの、開放感のあるLDKが広がる。空間にやさしい光を導くのは、いくつもの障子。そして居室には、和の雰囲気を醸し出す壷や人形がしつらえられている。棚を飾る竹の一輪挿しは、ご主人のお手製。千利休がつくったものの写しだという。「和の雰囲気がとても好きで。日本文化の神髄を学ぼうと、京都検定まで受験してしまいました」とご主人は笑う。 空間のアクセントになっているのはLDKと和室を仕切る襖。夫妻が京都で見て憧れた、唐紙に似た襖紙を選んだ。最近は庭の植栽も思案中という夫妻。飛び石のある日本庭園づくりにも興味があるという。 そんな夫妻が家に望んだのは、当然ながら本物の〝日本の家〟である右/瓦屋根、左官、杉板張りの組み合わせが和を感じさせる外観。左上/鍾馗(しょうき)さんという魔除けの神様を玄関の軒の上に。 右上/ご主人がつくった竹の一輪挿し。下/和室には、ご主人の家に代々受け継がれてきた和箪笥を。㈱小林建設こと。まずは家づくりの第一歩として住宅展示場を見学したが、新建材ばかりでつくられたメーカーの住宅は心に響かない。そんな時『チルチンびと』で㈱小林建設を知り、訪ねたモデルハウスに一目惚れした。「部屋を小さく仕切っていないおおらかな間取りと、国産の無垢の木を使ったしっかりとした建て方に、これだ、と思いました」とご主人。 小林建設は大正時代に創業。伝統の技術を受け継ぐ職人が埼玉・群馬の木材を使い、自然エネルギーを取り入れた家づくりに取り組んでいる。「私たちは『企業』というより『家業』。住まい手ともっと近い関係でありたいという心構えで、家づくりに取り組んでいます」と話すのは社長の小林伸吾さん。同社では、見学会から引き渡しまで社員全員で担当し、建主とのコミュニケーションを大切にする。「最初の打ち合わせにわざわざ社長が来て驚きました。でも社長の顔が見える会社って安心です」とご主人。 プランは夫妻が知恵を絞って練ったもの。それを元に同社は、力強さを感じさせる杉の曲がり梁、繊細な和室の意匠や小物を飾れるニッチを提案。LDKの壁は大谷石を市松張埼玉県・群馬県夫妻の希望を叶えたのは確かな大工の腕164

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