ベニシアと正、人生の秋に
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2正、ありがとう。いつもありがとう。若いとき、いろいろあったけれど、許して欲しい。どっちが先かわからないけれど、たぶん私ね。ありがとう。すべて、ありがとう。もういろんなことがあったね。許さないといけないこともいっぱいあった。いま、あまりこの家には子どもたちが来ない。正は山に行けたら、それでいいと思っている。山で死んでもいいと思っているように感じる。でも、そうじゃないかもしれない。そしたら、誰が、正のめんどうを見るの? と、私は心配する。正はひとりでも大丈夫だろうけれど、ファミリーを大事にして欲しい。何かあったとしても、許し合って、そして彼らが大人になったら、また子どもをつくっていく。そうやってファミリーは存在するんじゃないかしら。私のお母さんは何回も結婚したから、この子は私の子、この子は私の子じゃない、と言えなかった。お母さんにとって、子どもは全部、みんな自分の子ども。子どもを分けないの。それはお母さんの考え方。私はお母さんの考え方を素晴らしいと思っている。子どもって、同じように扱われたい。私が小さいときも、そうだったの。他の子はスポーツができるけど、ベニシアは苦手だから、お母さんは、たぶん私のことをあまり面白くないと思っていたんだけれど。正 へ

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