ベニシアと正、人生の秋に
5/18

5と続いている。それにもうまく関われるだろうと僕は思い、初めのうちは努力した。ところが、そこに入ることは簡単なことではなかった。そこで一歩離れた立場に身を置いて、黙視を続けることにした。傍観という生き方を僕は覚えたのであった。目が見えなくなってきたベニシアは、現在、人の助けを頼りにしている。家族を大切に思い、子どもたちを大切に育ててきたベニシアは、年老いた今、子どもたちにそれを求める気持ちだ。ところが、彼らはそれをあまりわかっていないようだ。僕もわかっていなかったが、あなたと正面から向き合うようになってわかってきたところだ。僕はベニシアから頼りにされていると。だから傍観というずるい生き方はもう捨てた。僕は応えていこう。おそらく、人と人の繋がりは、僕がまだまだ知らない、学ぶべき深いものが、もっともっとたくさんあるのだろう。人は一人で生まれて、一人で死んでいくものではない。大切な人と出会い、家族をつくって、信頼と愛に満ちた生活を望むものなのだ。暗いものに目を向けず、人生を楽しむ努力をしていこう。ベニシア、これからもずっとおいしいごはんをつくりますよ。                                   正

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る