チルチンびと 別冊67号「民家の再生と創造④」
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日本の古民家は 貴重な宝石 カール・ベンクスさんが日本に興味 を持つようになったのは 12 歳のとき、 絵画修復士のお父さんの本棚から1冊 の本を手にしたことだった。その本の 名は『日本の家屋と生活』(邦題)。建 築家・都市計画家のブルーノ・タウト が著したものだった。「挿絵や写真が たくさん載っていて、引き込まれまし た」とカールさん。それを機に柔道や 空手を習い始め、空手を学ぶために日 本大学に留学したのが1966年のこ と。神戸まで船で5週間かかったとい う。京都で木造建築を目にしたカール さんは、日本の大工はただの職人では なく芸術家だ、と書いたタウトは間違 っていなかったと確信する。留学前に パリなどでインテリアの仕事をした経 験を生かし、在日ドイツ商工会から仕 事をもらったり、大阪万博のドイツ館 の仕事をしたりしたという。そこでも 日本の小さな工務店と交流し、彼ら職 人の技術の高さを知った。その後、帰 国して本格的に建築デザインの仕事に 就き、日本の古民家を日本から招いた 大工とドイツに移築する仕事を始めた という。当時の日本は高度経済成長期 で古民家もどんどん壊されていたが、 日本の古民家を宝石のように感じてい たカールさんは残念でならなかった。

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