住宅雑誌「チルチンびと」別冊57号「民家の再生と創造① -古材・古民家の美-」
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8リビングには既存の皮付き丸太梁をそのまま使用。写真右上のエアコンは、組み子風の細工で見せる目隠しを。テーブルには美しい彩りの旬の野菜サラダや焼きりんご、パンケーキが並ぶ。右/ダイニングテーブルは京都の中古家具店で。 中/晃爾さんがコレクションするレコードの数は200枚以上。この日も晃爾さんセレクトの音楽が心地よく室内に響いた。薪ストーブはヨツールF100。 左/バーテンダーの晃爾さん特製、カシスリキュールベースのカクテルは、この日のためのオリジナル。名づけて「初夏のラベンダーとブドウのカクテル」。 もとはまんじゅう屋だったという古い町家。玄関には店舗時代を思わせる大きなカウンターが鎮座する。土間の先には懐かしさを呼び起こすガラス建具。戸を開けると目の前に明るいキッチンスペースが広がる。高い吹き抜けには野趣あふれるむき出しの梁が架かる。圧巻だ。 大正中期に建てられたこの町家に暮らすのは、結婚5年目の30代の夫婦。ご主人の佐々木晃こう爾じさんは、四条にある老舗ジャズバーの店長を務める。奥さんの友紀子さんは、自身のブランド「itono brooch(イトノブローチ)」を主宰するアクセサリーデザイナーだ。 学生時代から京都に暮らし、古いものや古民家をたくさん見てきた二人にとって、町家での生活は結婚前からの念願だった。物件探しのため日々ウェブサイトなどで情報をチェックするなか、5年越しにやっと見つけたというこの家。実は見学に訪れたときにはなんとすでに解体途中。居間部分の床はなく、壁もボロボロ。柱だけが残っている状態だった。しかし友紀子さんは直感した。「ここは宝の山だ!」と。 夫妻がこの家の改修を託したのは、京都で長年古民家の再生を手がける建築家の安田勝美さん。共通の知人を介しての出会いだったが、偶然に

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