住宅雑誌『チルチンびと』97号 -花と緑を愛でる家-
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17庭園に衝撃を受ける。「日本人の血が騒いだのかもしれません」とご主人。それから何度も京都に通い、ついに4年前、和を取り入れた庭づくりを始めた。梅、小さな苗から育てたモミジ、そして枝垂れ桜。そのうち「庭を眺められる和室が欲しくてたまらなくなった」夫妻は、その願いを建築家の松本直子さんに託した。雑誌で知った松本さんのものづくりの考え方に大いに共感していたのだ。梁、土壁、建具など手仕事や古いものを大事にし、素材は本物の無垢材を使う。夫妻の好きなものを詰めこんだ念願の空間を、松本さんはたくさんのアイデアで具現化させていった。 たとえば、土壁。滑らかな曲線を描いて光をやわらかく反射し、美しい陰影をつくっている。松本さんは、「従来型の堅い床の間に飾り棚では殺風景」だと、ひと間だけのこの部屋に合わせて、なだらかに隆起する土壁を設計。曲線をとるために原寸大の型を起こし、左官職人が手間をかけて、ていねいな仕事をしてくれた。「腕のよい職人さんに仕事をお願いできたのは幸せ」だと語るご主人は、職人の仕事を毎日見ながら「思わず息が止まっちゃいましたね」と、

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