住宅雑誌「チルチンびと」83号 キッチンで変わる暮らし
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20 よく晴れた日曜日のお昼前。家中に漂うスパイスや香味野菜の香りが、快く鼻をくすぐる。今日のメインの一皿は、トマトとタコの鮮やかなソースに絡めた手打ちのショートパスタ。キッチンではさわちゃん・ことちゃん姉妹もエプロンをキュッと締め、張りきってお手伝いした。この日はアトリエの“特別営業日”。友人一家を招いて、さあ開店だ―。 朋子さんの家には二つのキッチンがある。一つは家族のためのふだん使い、それと隣りあってもう一つ、アトリエ専用の小さなキッチンだ。アトリエとは、将来カフェや料理教室など食を切り口に人に集まってもらおうと、玄関脇に設けた部屋のこと。「料理が好き。人が好き。地域の人が集まれる集会所のようなお店を開きたくて。家と違ってお店なら、気軽に来てもらえるでしょ?」。 朋子さんはパスタ好きが高じてイタリアで地元料理を学んだこともある。このアトリエの根っこにあるのは、同じ目的をもつ人たちと料理をし、ともに味わう喜びに満ちた旅だ。 以前のマンション暮らしでも、不自由を感じていたわけではなかったが、「自分の得意なことを生かして、人が集える場所を持ちたい」という思いは増すばかり。仕事を辞めて家庭に入った後も、地域とつながりを持てる何かが欲しかったのだ。 家づくりへの思いを温めていたところ、目に留まったのは建築家・小井田康和さんの住宅。時間をかけて味わいが増す佇まいに惹かれた。しダブルキッチンで自宅時々カフェいずれ地域の人が集う場になれば——こんな思いで、家の一角に食のアトリエを設けた料理好きな朋子さん。自宅でカフェや料理教室を開くためのノウハウと、使い勝手抜群のキッチンを紹介します。神奈川県横浜市青葉区・S邸設計・フリーハンド:小井田設計室 + 関島恵美子 写真・西川公朗1集まる楽しさと暮らし心地を両立キッチンで変わる暮らし

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