住宅雑誌「チルチンびと」73号 -花と緑と暮らす-
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金沢駅から歩いて
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分、古いガ
ラス戸を引くと、花咲き乱れる野
山の情景が飛び込んできた。
艶やかな黄や橙色のスカシユリ、
たわわに実をつける紅色のスグリ、
薄水色の可憐なニゲラ、野趣溢れ
るカシワバアジサイ、霞を花穂に
したようなスモークツリー。
「野の草花を腕に抱えるように、
生けてみたくて」と言うのは花屋
「花のアトリエ こすもす」の店主、
角島泉さん。偶然にも同じ名をも
つ、昭和初期の木造「イヅミ薬局」
を活動の場として、
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年が経つ。
「花のアトリエ」との木彫りの看
板が示すように、ここはただ花を
売る場所ではない。アレンジメン
トや生け花教室のほか、角島さん
が器作家や音楽家と催す企画展の
古い建物と、
色鮮やかな夏の
草花の饗宴
上2点/「イヅミ薬局」の看板がかかる建物は昭和3年に建てられた木造建築で、登録文化財にも指定されている。緑青色の外壁は、防火のために葺かれた銅板。
店内上部にかけられた紺色の布は、バリで見つけたアンティークのろうけつ染め“ バティック”。 下段右から左へ /従妹の手による店の看板。 /古いケビ
ント(医療棚)にガラスを中心とした花器が並ぶ。 /愛用の花鋏。京都であつらえたものもある。 /店内の本棚には植物図鑑の全集が。
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