住宅雑誌「チルチンびと」72号‐古き美を愛おしむ暮らし
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や、旅で出会ったものを並べただけなんです。あとはなぜか、古いものをいただくことが多くて(笑)」 出自が異なるものたちが不思議と調和しているのは、時を超えて、長く人に使われてきたからこそ。あたかも角が丸くなるように、主張や目につく個性がとれて、互いになじみやすくなるのではないかと横山さんは考える。  そしてそれらをやさしく受け容れる、この古い町家。 30年ほど空き家だったため相応に傷んでいたところを、横山さんは、職人はもちろん友人知人の手を借りながら、こつこつと繕っていった。大谷石をはじめ、三和土にベンガラ、土壁や和紙など、使われているのは肌になじむ自然素材。季節それぞれの色合いを映して、家と人に応じてくれる。時を積み重ねた静けさが、その表情に刻まれていく。  建物にしてもしつらえにしても、古いものの良さというのは、職人が吟味された素材をていねいに扱う、きちんとした仕事がなされていたというのもあるだろう。だからたとえ壊れたり不具合があったとしても、直して使い続けることができるのだ。 右/玄関を入って右の間は、「好日居繕いの会」や時にはギャラリーとして使われている。当初は、洋館を思わせる両開き戸に畳敷きという和洋折衷の部屋だったが、棹縁天井を剥がして梁を現し、床板を張って洋間の趣に。 上/しみじみとした味わいのある玄関まわり。玄関三和土は、横山さんが友人たちと叩いた。引戸も懐かしい佇まい。 左/玄関から洋間を見通す。左より右へ/ やさしい音がする明治時代のヤマハの足踏みオルガン。これで演奏会を開いたことも。/当初聚落壁だったが、ぬくもりのある藁スサ入りの中塗り仕上げに。/玄関に祀られているお札。

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