三重県伊賀市の中心市街地から数km離れた集落。 90代の祖母の家の道路を挟んだ向こう側、 若い夫婦は祖母の生活を見守りながら暮らすための家を建てることを選んだ 祖母の暮らしを 見守る 三重県伊賀市の農村地域に、 妻の祖母が一人で暮らしていた。 祖母は自分で生活することがで きていたが、高齢のため将来的 には家族の協力が必要になるこ とが考えられた。私の仕事が生 活拠点を選ばないこと、幼い子 どもが自然豊かな環境で成長で きること、妻が愛着をもつ故郷 に興味を感じたことなど、いく つかのきっかけが重なり祖母の 住む地への移住を決意した。 外と内をつなぐ 玄関土間のある家 祖母から譲り受けた土地は集 落の端、緩やかな丘の上に位置 していた。その土地の奥にある 祖母の家からは集落や遠くの山 並みを一望することができた。 祖母の暮らしがこれまでと同じように営まれていくように、建 物を分棟で配置しその間から祖 母が見てきた風景が感じられる ように計画した。 建物の間にある「つなぎの 間」は、祖母が育てた野菜を置 く玄関土間として、訪れた人と 交流できる縁側として、子ども の遊び場として、気候のよい時 期には建具を引き込むと室内と つながったリビングとして、ま た草木や花が育ち虫や鳥が行き 交う大地の一部として機能して いる。 外部空間を経由しなければ生 活が成立しない間取りは不便さ もあるが、暮らしと自然が混ざ り合い展開していく感覚はかけ がえのないものである。また外
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