地域主義工務店の 「設計」とは 以上のことを、地域主義工務店が 「設計する」ことに置き換えてみま しょう。イメージ、素材、構成、住 む空間の感覚、といった要素が一体 となった「造形」をすることです。 その結果として、質のよい美しさや 逞しさ、心地よさを創りだす。ただ 無害な材料を使ったからといって、 そのような家ができるわけではあり ません。「美学」が必要です。(中略) また、最近ではかつての民家のよ うな、梁や桁の見える家が人気を取 り戻してきました。家を支える仕組 みが見えることは安心感があり、天 井のある圧迫感が取れて開放感があ るのでしょう。民家が新しい魅力を アピールするようになったのです。 人間は常に「変えたい」欲求をも っているので、文化もまた変わって いきます。が、その中でも変わらな いものを見直していけばいいのです。 どこをどう変えるかが、現在におけ るデザインというものであり、現在 の創造力と言えます。民家のデザイ ンを受け継ぐことは、現代のデザイ ンを創造することでもあるのです。 地域主義工務店は創造力を養わな くてはいけません。それには、建築 家と仕事をし、学び取ってほしい。 そして自分でできるようになること、 建築家にも要求できる眼力をもつま でになってほしいと願っています。 ―平良敬一『機能主義を超えるもの』(風土社)より 7
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