チルチンびと119号「伝統構法と和モダン」
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神奈川県中郡大磯町 明石邸  復活する 石場建ての家 【使い捨て文化に対抗する日本建築】 設計・施工= 杢 もっこうしゃ 巧舎 構造設計= 悟 さとる 工房 写真=畑 耕 文=鈴木和宏 コンクリートの寿命は 60 年、木は千年、石は万年。 日本の気候風土から生まれた石場建ての家を、 今日の建築基準法のもとで実現するのは、至難の技となっていた。 しかし、地震に強く、長持ちする石場建てに熱い思いを寄せる 施主、大工、設計者が出会い、ここに復活を果たした。始まりは1冊の本  切妻の大屋根に漆喰壁と下見 板張り、シンメトリックなデザ インが印象的な明石邸は、日本 の伝統構法である石場建てを採 用した、画期的な住宅だ。 「石場建てを知ったきっかけは、 学生時代に読んだ一冊の本でし た」と話す明石さん。その本と は、法隆寺や薬師寺を修理・復 元した西岡常一棟梁の著書『木 に学べ』。「この本を読み、現行 の建築基準法に懐疑的になり、日本の優れた木造技術を後世ま で残したいと思うようになりま した。そのためには重要文化財 などの一部の建築だけでなく、 一般住宅で広く生かしていくこ とが解決策だと考えました」。  月日は流れ、家族5人で暮ら す家を建てることにした明石さ ん。石場建てへの思いが再燃す るが、現実は厳しく、どの工務 店に相談しても断られた。そん なとき、伝統構法を謳う工務店 があることを知る。電話で恐る 恐る「石場建ての家、できます

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