チルチンびと116号「夏の家」
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データから読み解く 自然共生住宅 文・写真・図表=金田正夫 金田正夫氏が提唱するのが、 自然と対峙するのではなく、自然と共生する住まいづくり。 遮熱、調湿、蓄熱、通風を考慮した奥深い設計術を、 東伏見の家の実測データとともに読み解く。 春夏秋冬と向き合う家  一時前までは改めて語られることばで はなかったが、近年は様子が変わってし まった。外は四季が移り変わるが室内は 1年中春の住まいが主流になった。建物 を外部と完璧に遮断し外の気候とは全く 隔絶させ空調機で温湿度を調整する高気 密高断熱住宅がそれになる。  この家は180度違う。四季の移り変 わりとできるだけ近いところで生活をし ながら、夏は涼しく冬は暖かく暮らすこ とをめざした。頼るのは機器や工業材料 ではなく自然の法則・営みになる。そん な虫の良いはなしが有るのか。現代のよ うな利便な機器や材料がなかった戦前ま での時代はそれが当たり前で、頼ったの は自然の営みであった。その試みは永き にわたって試されてきた。そこで戦前の 民家に温度計を据えて実測し検証した。 結果、巧みに自然の特性を取り入れた英 知の結晶ともいえる工夫がわかってきた。  この家はその実践例でも有る。先人の 知恵を繙き現代に応用し結果を温度計測 で検証しその証を以下に詳述する。

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